うたのは*17thアルバム『イロアクイドラ』
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その王様はとてもとても孤独でした。
産み落とされたその折から、とても孤独でした。

親のような男は、親ではなく。
子供としても扱ってもらえないその子供は
とてもとてもさびしがり屋で、ひとを、ぬくもりを欲していました。

ひとりきりで遊ぶ部屋の中は
寂しさを紛らわすためのぬいぐるみで溢れ
ひとりきりで過ごすことが怖くないようにと
沢山の絵本を側において過ごしていました。

その絵本の中には、お母さんと過ごす子供の姿が描かれていました。
幸せそうなその子供と自分の何が違うのか? 子供は必死に考えました。

考えて考えて、問うて問うて問うて。

…その答えが見つからないまま
子供はいつしか、大人になりました。

心の中にぽっかりと空いた穴はふさがれないまま
大人になりました。

子供だったその子は、親と同じ『王』と呼ばれる存在になりました。

寂しさを抱えたままのその子供は
静かに静かに歪んでいったのです。

子供は、大人になり。
王になり、自由になりました。…不自由に、なりました。

子供のころに出来なかった事を、望んでいたことを。
彼は求めるようになりました。

自分にはないもの。
絵本に描かれていた幸せなそれを。
自分自身で、つくれるようになったのだと、彼は気付いてしまいました。

血を。
つながりを。
自分にはないものを。

「それさえあれば」大丈夫だと。自分に言い聞かせるように。

すがりついたその先にあったものは。
最大の禁忌とされていた「血」を残す行為。

決して、あってはならないその禁忌を踏み外した先にあったもの。
それは悲しい悲しい、物語。